ウイスキー投資の情報収集していると、「○○○店で山崎12年を見かけたので、とりあえず購入しました!」と、自宅のウイスキー棚を自慢している人を見かけます。
山崎12年やNAS、白州12年、I.W.ハーパー12年、まどろみバーメイドなど、これでもかとネットで話題になったボトル収集しているようです。中には山崎18年など高額ボトルを所有している人もいます。
正直言って、米国ハイテク株のように「買えば上がる」時代は終わりました。
国産ウイスキーは複雑に乱高下し、いびつな相場が続いています。
山崎12年も18年も今年4月から、微減して下落トレンドに向かっています。
なぜ山崎12年を買ってはいけないのか?
「飲みながら保管して楽しむ」には良いと思いますが、投資としては向いていません。
山崎は2015年ころから人気が出て、国産ウイスキーブームも8年近くになります。ブームが出てから増産した原酒が、2027年には大量に出てきます。2025年には「山崎10年」が復活して先行販売されるかもしれません。
なぜ増産されると予想するのか、それはサントリーが2015年に約60億円を投資した「近江エージングセラー」には約4万樽以上もの保管ができるスペースがあるためです。
バレルサイズの樽だとすると1樽が約180リットルで、貯蔵スペースには720万リットルが保管できる計算となります。これは「近江エージングセラー」だけの話で、蒸留所に併設された貯蔵庫や他のエージングセラーを入れると、想像を超えた量の原酒を保管できます。
25年以上の超長期貯蔵用や安価なブレンド用など、様々な原酒が保管されると予想されるので、一概に貯蔵量=山崎の生産本数とはいえませんが、インパクトがある保管量です。
サントリーは上場していないので決算書は見れず、運営方針なども非公開ですが、いずれかのタイミングで「皆様お待たせしました!山崎12年が大量にできました!」と街中のスーパーに入荷する可能性も十分にあります。
すると、コツコツと投資として積み立てていたはずの山崎12年は、’00年代のように定価割れの二束三文で売買されることもあります。
ポジティブに捉えるなら、マッカラン蒸留所のように増産体制を整えても、商品の出荷を調整してブランドイメージが崩れないように高い値段でちょこちょこ売るのを続けるかもしれません。
いずれにしても、大量に増産できる現行ボトルに、ポートフォリオの大部分を割くのは賢いやり方ではないと思います。あとから増産できる仮想通貨のようなものです。
初心者こそ、数量が限定のボトルを保管するべき
私自身は、国産ウイスキーの価値を猜疑的にみているのですが、新興蒸留所のファーストリリースを収集して長期保管するのは、山崎12年を収集するよりはマシだと思います。
その理由が、同一のボトルが今後出ることはなく、数量が限定されてロックアップされているためです。例えばある地方の蒸留所が最初の蒸留から3年経ち、ファーストリリースを3,000本発売したとします。個人やシングルモルトバーで多くが消費されます。味に興味を持つ人が増えるほどに、1本ずつ開栓されて、残量が減っていきます。
この最たるものがマッカランのエディションNo.1です。もともと有名な蒸留所で、シリーズがNo.6まで継続して出たということもありますが、発売当初は3年ほど価値が上がらず定価を大きく下回って売買されていました。
当時、定価が15,000円のマッカランのエディションNo.1が、最安値は7,000円と二束三文で売られていました。私も含めて実際に飲んだ人は多いはずです。
ところが発売から5年経ち、続々と次のエディションが出るとNo.1は減っていき、価格が上昇します。上昇するのでコレクションしたくなる、といった循環で2020年には10倍の15万円に。現在2022年には最高値40万円まで上昇してしまいました。
このように製造された量が限られているウイスキーは、無制限に製造できるボトルよりも価値が上がりやすいです。
闇雲に国産ウイスキーをスーパーで買うのではなく、数量が限らられて、今後価値がでるウイスキーを購入するのが投資として鉄則となります。