昨日、都内のデパートや酒販店を10件ほど廻ったのですが、ウイスキーの棚がめっきり寂しくなっていました。
知り合いの店員さんと話していると、「入荷できる、発注リストが以前よりも一段と減っている」とのことです。去年であれば数ページの中から入荷する商品を選択していたものが、今ではほんの1枚のリストから選ばなければならないことも。
なぜ代理店が輸入しないことがあるのか
最近、代理店のブログで興味深い記事を読みました。
海外から商品が来ないのは、ウクライナの件でコンテナが中々来ないこともありますが、「代理店が入荷しない」という事情があるようです。
EU圏多くの輸出元は原油・ガスといったエネルギー資源高騰により、急激なインフレが発生しています。ウイスキーを商品にするガラス瓶やダンボールひとつ取っても、入荷遅れや価格上昇がおきています。人件費も上昇しています。
そんな中での円安ドル高、ポンド建てでもユーロ建てでも弱い円では、去年よりも為替により極端に商品が高くなりすぎて、高額商品は特に仕入れを見送ることが多いようです。日本国内では給料も上がらず、経済成長していないので、商品価格に反映しても購買力が追いつかないと判断しています。
そうした事情があり、洋酒を始めとした高額商品は続々と店舗から姿を消しているようです。
2022年から急激な価格変動が起こっている
今までは、代理店がコスト削減で価格上昇を吸収して、安定価格で売ってくれたり、もし上昇したとしても昨年比で5~10%というように穏やかな変動でした。「サントリー/2016年4月1日出荷分からウイスキー値上げ」のときは、最大25%の上昇だったのでSNSや掲示板で大騒ぎされたほどです。
それでも、数年に一度しか大規模な値上げはされませんでした。
2022年は、前年比200%上昇が当たり前になり、シングルモルト12年のような定番商品さえ急激な値上がりをしています。
高額商品は特に顕著で、昨年まで10万円で売られていたものが、現在の為替と価格変動で入荷した場合は、20~30万円以上で売らなければいけません。高度経済成長期ならまだしも、消費者が価格上昇を受け入れると見込めないために入荷を見送っています。
百貨店も弱気な買い付け?
銀座や日本橋にある百貨店も変化があります。
ワインコーナーで話を聞くと、有名生産者のワインは昨年まで村名や広域など幅広いラインナップから選べたそうです。それが今年になって急激に減ってしまい、入荷できるものが限られているそうです。
銀座M百貨店は、値札がついていない商品が店頭のワインセラーに置かれていて「非売品ですか?」と聞くと、「外商顧客が20本まとめて購入したもので、完売しています」と返答を頂きました。
ワインの入荷が不安定なため、お金に自由の効く富裕層は平然と数百万円単位で購入していくようです。
良いものからすぐに売れてしまうため、店頭の高額ボトルも、ややマイナーなものや人気が低いものが陳列されていました。
ブルゴーニュワインなんかは、ウイスキーと違い収穫の不作が関係していることから、2021年には例年の25%程度しか生産できなかったため、2020年のボトルに対して価格転嫁を行っている生産者もいます。
そのため為替レートが昨年と同等でも、30%以上の値上がりをするドメーヌがあります。そこに円安や輸送コスト高が反映するので、前年比で150%以上の銘柄も出てくるそうです。
つまり端的にいうと、今年10万円のワインが来年は15万円で売ると、ほぼ確定しているというわけです。来年の夏から秋には、ジワジワと二次流通価格にも反映していくと考えられます。
2022年の秋から冬に相場はどうなる?
これは予想でしかないのですが、「市場が受け入れるのに時間が掛かる」と思います。仮に、去年まで10万円で買えたウイスキーが、価格上昇して現在20万円でしか買うことができなくなったとします。
「海外相場は22万円ですよ。少し安いですよ!」と言われても受け入れるのが難しいのではないでしょうか。個人消費はもちろん、飲食店が仕入れるとしても提供価格に転嫁して、1ショット1万円を取ることができる店は限られています。
そうした理由から2022年の秋から冬は、ヤフオクなどの二次流通価格が急激に上がるとは考えにくいです。ジワジワと上がると思います。
来年の2023年頃になって、海外のウイスキー愛好家が「お、日本めっちゃ安く売ってる」と代行業者を通して輸入したり、インバウンドの訪日外国人の爆買で更に国内在庫が減って「いよいよヤバい」となり、二次流通価格が上がるのだと予想します。
昔はマッカランが日本より半額近く買えたのに、今やレアカスクが80,040円と二倍以上の高額販売に……。近々、海外にウイスキーを輸出して稼ぐ副業が出てくるかもしれませんね。(本来、法律上難しいはずです。)
海外に日本の高額洋酒が流出する?
なぜ、そう予想するか。
それは私自身が2018年頃、eBayに出品されているマッカランのオールドボトルを買い漁っていたためです。現在も所有しているのですが当時のヤフオクで10万円のボトルが、イタリアでは僅か299ユーロで即決出品されることがありました。こうなると国際送料を加味しても日本の半額以下で購入できます。
今は世界各国の相場がすぐに分かる時代なので、「日本が割安」と分かれば、中国やインドを筆頭にアメリカ、ヨーロッパなどに高額ウイスキーが流出すると思っています。
昔話となりますが、私が10代の頃は1ドル=80円前後だったので、オーディオ機器や香水などバンバン輸入して、使わなくなったらヤフオクで売却していました。300ドルで購入したオーディオ機器が中古で4万円で売れたり、使いかけの香水が新品より高く売れることもあり、ほくそ笑んでしたことを覚えています。
当時は円高だったのに代理店が2~3倍とボッタクる業者が多く、ブランドバッグ、腕時計、トイガン(エアガン)、オーディオ、車用品など、並行輸入で簡単に儲けることも可能な時代でした。
アメリカ合衆国住宅都市開発省の発表では、2021年の平均世帯収入(全国中央値)は79,900ドル=約1,100万円です。全ての州を合算し、トレーラーハウスに住むような貧困層を入れた統計でも中央値が1,100万円です。
平均値ではないので、ミリオネア(超富裕層)が押し上げている数値ではありません。ちなみに日本全体の平均世帯年収(2018年)における中央値は437万円です。
米国は極端なインフレで生活が苦しい人も多いようですが、このような所得があると趣味嗜好品に対しても、日本人とは違う感覚でお金が出せるのだと思います。
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