昨年、「【ニュース】33年間忘れ去られていたマッカランの樽が過去最高の130万ドル(1.7億円)で落札」とお伝えしましたが、現地の価格も異常なほどに高騰しています。現在の樽の価格から今後のウイスキーの価格を予想してみます。
ウイスキーの輸入には様々なコストがかかる
ウイスキーの樽から500本取れるとして、「樽の価格」から「本数」を割っただけの費用で販売できる訳ではありません。
例えば、次のようなコストが発生します。
ウイスキー樽の購入費用
ウイスキーの種類、年代、生産地域などによって価格が異なります。樽の容量や樽の材質(オーク樽、シェリー樽など)も価格に影響します。
ボトリングコスト
ボトルやラベルのデザイン、品質、印刷費用、ボトリング工程(手作業か機械か)などによって変わります。
輸送費用
発送地と日本までの距離、輸送方法(船便、航空便)、輸送量、保険料などによって費用が変わります。CIF(Cost, Insurance, and Freight)=運賃・保険料込み条件、FOB(Free on Board=本船渡し)蒸留所から船便の引き渡し場所、など受け渡し場所や保険の有無によって様々です。
蒸留所から、通関の倉庫まで移動するだけでも大きなコストが発生します。
輸入税および関税
ウイスキーの輸入に関する日本の関税や消費税がかかります。これはウイスキーの価格やアルコール度数、数量によって異なります。英国内と日本国内で税金が発生します。
通関手続き費用
通関業者による手続き費用がかかります。他にも検疫、検査、ライセンス取得などの費用がかかることがあります。
上記には現地の代行業者や、日本国内の卸問屋、小売店の利益が乗せられていません。つまり、樽の価格に対して数十パーセントものコストが必ず発生します。
では、具体的に樽の価格を見ていきましょう。
英国には様々な樽の仲介サイトがありますが、日本にも「Whisky Cask Investment」という代理店がありますので、今回はこちらのサイトを参照して樽の価格を見てみます。
紹介されているカスクから、最も高いものをソートすると、「グレンリベット 53.2年 1st fill sherry Hogshead Cask No.FM#2365」が販売中になっています。
4,000,000ポンド=約681,671,826円(6.8億円)です。ここに手数料が掛かりますので、約749,738,908円(7.5億円)。これをアウトターンの139本で割ります。
すると1本あたりの価格が出ます。1本の価格は原価で、5,396,678円(540万円)。こちらに、様々なコストがかかるので、実際の販売価格は1本1,000万円近くなると予想できます。
では次に高い「マッカラン 35.1年 1st Fill Sherry Butt Cask No.BG3」はどうなのか?同じように計算すると、1,693,692.00ポンド+購入手数料10%で、317,499,081円(3.2億円)です。
先日のニュースでは33年間忘れ去られていたマッカランの樽が過去最高の130万ドル(1.7億円)で落札となったので、そこから2倍近い価格になっています。
1本あたり563,297円となります。1988年-2023年(35年)マッカランを発売したとすると、樽の原価でも56万円。実際の販売価格は、安くても100万円以上になりそうです。
他にも様々なカスクがありますが、良い感じの「グレンドロナック31年」を発見しました。こちらは、142,822,585円でアウトターン543本ですので、1本263,038円。発売したとすると、35〜40万円でしょうか?
昨年、同スペックの「グレンドロナック30年」が、18万円ほどで販売していました。
今の樽の価格からすると、流通しているグレンドロナックは破格と言えるほど安いことが分かります。マッカランやグレンドロナック、グレンファークラスは、シングルカスクが急激に減っているので、日本国内で手頃なボトルを買い集めるのは、長期的には良い投資となりそうです。
安い順にしてみると、タリバーディン蒸留所であれば2,037ポンド(約347,042円)から存在するようです。手数料込で381,746円。ボトル換算数は285本ですが、現在はニューポットで0年目ですので、これからエンジェルズ シェアといって年間約2%ほど減少してしまいます。
12年後で計算すると、エンジェルズシェアで理論上は223本ほどまで減少します。アルコール度数も64%から55%前後まで低下する可能性もあります。つまりカスクストレングスで詰めるとすると、1本あたり1,711円に。
ボトリングや通関など様々なコストを入れても5,000円以下にはなりそうです。
ただし、長期保管の場合は保管の費用が別に発生することもあるので、個々の契約条件を確認する必要があります。
普段はボトル投資を推奨していますが、本気で20〜30年の超長期投資を検討するのであれば、ニューポットの若い原酒を購入するのも、ひとつの手段となりそうですね。
免責事項
当サイトの内容は個人的な推測に基づくもので、内容の完全性や、その正確性を保証するものではありません。ウイスキー投資は法律上の制約や損失が発生する場合があります。必ず自己責任おいて入手・売却等をお願いします。利益が出た場合は、確定申告など税務上の申告が必要になる場合もあります、税理士や税務署職員に相談ください。大量の酒類を個人売買する際には、酒税法上の免許や認可が必要になります。