
最近は、転売ツールとして国産ウイスキーを大量に購入する人がいますが、見ていると危険な売り方をしていることがあります。
酒税法第五十六条には次のように定義されています。
第五十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項の規定による販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者
二 第三十条の二第一項若しくは第二項又は第三十条の三第一項の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつた者
三 第三十条の三第二項の規定による申告書をその提出期限までに提出せず、又は偽りの申告書を提出した者
四 第四十三条第十二項の規定に違反した者
五 第四十五条の規定に違反した者
六 第五十条第一項第二号又は第三号の規定による承認を受けなかつた者
七 第五十四条第一項の罪を犯す目的で原料、機械、器具又は容器を準備した者
酒類を繰り返し販売するには、酒販免許が必要になります。
具体的には「通信販売酒類小売業免許」もしくは「一般酒類小売業免許」などが必要です。ただ、例外があり『自身の飲用目的で購入した又は他者から受贈されたなどの酒類のうち、家庭で不要になった酒類をインターネットオークションに出品する』ような、継続的でない売却は問題はないとされています。
Q5 インターネットオークションに酒類を出品したいと思いますが、この場合に酒類販売業免許は必要ですか。
A 酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります。
したがって、インターネットオークションのような形態であっても、継続して酒類を出品し販売を行う場合には酒類の販売業に該当し、販売業免許が必要となります。
ただし、例えば、ご自身の飲用目的で購入した又は他者から受贈されたなどの酒類のうち、家庭で不要になった酒類をインターネットオークションに出品するような通常継続的な酒類の販売に該当しない場合には、販売業免許は必要ありません。
これは、ガレージショップや学校のバザーなどに酒類を出品する場合も基本的には同じです。
根拠法令等:酒税法第9条
法令解釈通達第2編第9条関係
上記は国税庁のページを引用したものですが、非常に大切なことが書かれています。
例えば、10年前に購入した「山崎25年」が、価値が20倍になって200万円で売れたとします。この利益だと確定申告が必要になりますが、酒税法上は継続的な酒類の販売に該当しません。
ですが、山崎や白州を繰り返し転売していたらどうでしょうか。
「これはヤバいでしょ」と思ったのが、下記のような売買ケースです。

同一のボトルを50本近く転売しています。これが何回か続いたら、自身の飲用目的で購入した又は他者から受贈されたなどの酒類には該当しませんし、むしろ完全に営利目的な継続的な酒類の販売に該当します。
仮に、不服申立てなどで裁判を起こしたとしても確実に不利な状況になります。同一の銘柄を反復して売却した場合は悪質と判断されて、起訴される可能性もあります。
ウイスキーの長期投資はどうするのか
今のところ投資金額によって方向性を決めるのが良さそうです。
記事の後半には、酒税法で強制捜査の実例もあげてみます。
例えば、『ボトルが1~10本、時価20万円未満の投資』この場合はヤフオク売却・無申告で基本的には問題ありません。雑所得が20万円まで控除されるので申告しなくても合法になります。
無職などで収入がない場合は基礎控除の48万円以下までは申告が必要ありません。(※この部分、間違っていたらすみません。)
『ボトルが20~30本、時価100万円未満の投資』は、一度で全量を売却してしまえば、継続的な酒類の販売で立証されるのは難しいはずです。仮に目をつけられても、このときに確定申告を行っていれば悪質性は低いと判断されるはずです。
ただし、このあたりから判断が怪しくなり、税務署や検察官など担当者の裁量によりそうです。少なくとも免許を持つ買取専門店で一括売却すれば、酒税法で起訴されることはないと考えています。
問題は『ボトル本数が300本以上や時価1,000万円以上』といった場合です。私の場合は、英国のウイスキー樽まで数えると非常に多い数量があるので、上記の手法は不可能だと考えています。他にも「山崎オーナーズカスク1986」を1本売却しただけで300~400万円になってしまうので、確実に申告が必要になりますし、酒税法上もかなり神経質に考えるべきです。
営利目的の転売かどうかが肝になる?
何本・何万円からダメという具体的な定義がされていないため、解釈がバラバラです。最初に例に挙げたような「誰が見ても営利目的の継続的な酒類の販売だよね?」と判断できるものは起訴される可能性があります。
上記の例では、白州180mlを49本セットで91,000円、手数料と送料を抜くと利益は2万円未満です。たった2万円のために、酒税法違反のリスクを犯すのはバカバカしいです。大抵そのような方たちは、確定申告も行っていないので目をつけられたら一発アウトです。
逆に本数が500本でも「50mlミニチュアの昭和時代のコレクション」をセットでヤフオクに出すような人は問題が無いと思います。継続的な酒類の販売=転売かどうか、このあたりを注意すれば極端に怖がる必要はありません。
金額が大きい人は「免許取得」を視野に入れる
これは個人的な考えですが、総額200万円を超えたあたりから、免許取得を視野に入れた方が良いと思います。個人事業主でも良いですし、法人でも良いですが、取得すれば合法的に売買が可能になります。
私の場合は法人設立と古物商営業許可を取得しているので、売却する段階の1~2年前までには「通信販売酒類小売業免許」を申告しようと思っています。財務諸表や過去の借り入れなど審査があるそうですが、よほど問題なければ取得できるといわれています。
株式会社として法人設立する場合は、法定費用と定款、会社印鑑など約25万円と資本金100万円が必要です。資本金は少なくても通る場合がありますが、多いと許可が出やすいです。
また法人登記する住所、酒類の保管に適切な場所の証明、法人銀行口座などが必要になります。資本金は会社に入れても、ウイスキー購入にも使えますし、減るものではありません。酒販免許の申請は自分で行えば9万円程度、代行業者に依頼すると20万円程度となるようです。
総額にすると手数料などが50万円、そこに資本金が必要になるというイメージです。ウイスキー投資として500万円~1,000万円以上費やす方であれば、それほど高い初期費用ではないと思います。
最後に「せどり無免許」で起訴されたという貴重な情報をシェアします。
5億円ウイスキー売却で強制捜査と在庫没収
私、お酒せどり無免許で税務調査入りましたよ。
酒税法違反 罰金刑満額の50万 過去の所得税170万
消費税、重加算税30万 在庫没収850万 3年間酒に関する免許取得不可ですね。
初犯なので酒税法違反については罰金刑のみ 罰金刑は取り扱い量により1〜50万円 次からは禁錮刑です。在庫没収については、国税通則法の適用で強制的にです。
売り上げは、 2017 1000万 2018 4000万 2019 8000万
2020 1億1000万 2021 2億5000万 くらいです。
売り上げです、利益ではないです。確定申告は2020年からしてます。
2021年の9月頃に税務調査入りました。そこからやってません。
国税局、税務署側も冤罪はダメなのでめちゃくちゃ調べてきますよ。
僕は2年前から内偵捜査入ってたみたいです。
オープンチャットで偶然見つけた会話ですが、2019年から税務署が内偵を進めていたようです。この方は確定申告も、1億円以上からというガバガバ申告なので、「まあ、そうなるでしょ……」という印象が強いですが、4000万円程度からになると目を付けられるようです。
酒税ではありませんが私も以前、税務調査に入られたことがあります。優秀な税理士を付けていたのと、管理していた帳簿が後から出てきたことで結局1円も追徴課税をされませんでした。
当局は銀行口座の大きなお金の動きを定期的にチェックしているので、200~300万円以上の入出金は見られていると考えた方が良いです。
毎月のようにお酒のせどり売買で数百万円の入金があれば、ほぼ100%バレています。無免許で年間1~2億円の売上となると、国税局査察部の強制捜査が入っても何もおかしくない状態です。
長期保有はリスク管理にもなる
繰り返しの話になってしまいますが、当サイトでは10年以上の長期保有を推奨しています。長く持つことで過去のボトルが飲まれて減っていき、結果的に価値が上がる可能性が高いからです。
価格が上がるだけでなく、長期保有していたボトルの場合は上記のような売却時のリスク軽減にもなるはずです。
これらの話は、私が個人的に調べた情報を元にまとめたもので、実際には解釈の違いや内容の誤りがあるかもしれません。売却で不安な場合は、管轄する税務署や税理士に相談するようにお願いします。
免責事項
当サイトの内容は個人的な推測に基づくもので、内容の完全性や、その正確性を保証するものではありません。ウイスキー投資は法律上の制約や損失が発生する場合があります。必ず自己責任おいて入手・売却等をお願いします。利益が出た場合は、確定申告など税務上の申告が必要になる場合もあります、税理士や税務署職員に相談ください。大量の酒類を個人売買する際には、酒税法上の免許や認可が必要になります。