今回のウイスキー記事は、個人的な偏った考えのため真に受けないで下さい。酒の席で悪態をつく、酔っぱらいの戯言だと思って頂ければ助かります。
日本には、本物のウイスキーが少ない
今や国産ウイスキーは、世界5大ウイスキーの産地の一つに数えられるほどに人気があります。特に中国市場での加熱が凄まじく、未だに右肩上がりで取引価格が上がり続けています。
それでも国産ウイスキーは、品質が価格に追いついていないと思っています。理由はいくつかあるのですが
・利益主義と隠蔽体質
・こだわりのない原材料
・理解の無い生産者
この3つに分けて書いてみます。
利益主義と隠蔽体質
「売れれば何でも良い」状況が、国産ウイスキー界隈には存在します。
どういうことか解説すると、本場英国ではウイスキー作りに厳しい法律と、品質基準が定められています。
このように厳格な基準が存在して、一つでも適合しないと「スピリッツ」というカテゴリーに格下げされ、ラベルに「ウイスキー」と書くことができなくなります。
日本の場合は、ウイスキーの法律は以下の定義しかありません。
ビルの一室でもウイスキーができる
保存期間の指定や樽材のサイズ、蒸留所の指定などもありません。そのため、雑居ビルの一室で蒸留したものでも、原料の大麦や穀物を発芽されて糖化していれば、翌日には瓶に入れて「ウイスキー」として販売できるのです。
それだけでなく、”アルコール、スピリッツ、香味料、色素を加えることができる。”とありますが、ウイスキーの蒸留したばかりの原酒(ニューポット)に対して、酒精強化ワインや甘味料、酸味料などで着色することができます。
連続式蒸留器を使えば95%近いアルコール度数を保てるので、無色透明の高アルコール度数の「麦焼酎」を作り、あとから水、添加物をカクテルすれば低コストなウイスキーの完成です!
樽で熟成されないウイスキー
実際に、大手酒造の作るウイスキーでコンビニに並んでいるようなものは、インチキウイスキーが存在します。「一度も樽に入っていない」ウイスキーが認められているのです。
その点、スコッチウイスキーは添加できるのは水とカラメルだけです。無味カラメル着色料というのは、味もニオイもない色を補強するだけの色素です。あとから甘口ワインを足すなんてことは一切許されていません。
それだけでなく、日本のコンビニに売っている格安スコッチでも、必ず700L未満のオーク材の樽で3年以上貯蔵されています。物品税倉庫といって政府が管理して鍵を所有している倉庫で熟成が義務付けられています。
国産ウイスキーは、各社の上位ボトルだけは蒸留から樽貯蔵まで蒸留所で一貫していますが、廉価版ウイスキーは蒸留所から離れた倉庫のような貯蔵庫で少し寝かされることもあります。ひどいと樽に入っていないアルコールでカクテルされたものが販売されます。
生産量はザ・グレンリベットの10倍
実際に、サ◯◯リ◯のウイスキーは1980年代までは、自社蒸留所のウイスキーに対して、水とカラメル、酒精強化ワインで味付けを行い、低くなったアルコール度数を濃度の高いグレーンウイスキーで補強して出荷していました。
例えば2019年の「◯瓶」出荷量は、45,024,000リットルです。英国で最も生産能力の高いザ・グレンリベットの年間出荷量が600万本(4,500,000リットル)ですので、10倍以上も出荷している計算になります。
さすがに現在の「◯瓶」はリキュール添加などしていないと願いますが、どうしたわけか出荷量が異常に多いのが現実です。
小規模の新興蒸留所もブレンドに力を入れる
これは資金繰りのために仕方ないことですが、「大手とは違ったこだわりの品質を!」と謳っているような新興蒸留所も、スコッチのバルクウイスキーをブレンドしたボトルを、漢字ラベルで国産ウイスキーのようにして売っています。
「とにかく国産ウイスキーが人気の今、売りまくれ!」と言わんばかりの海外原酒ブレンドをバンバンリリースして、スーパーで販売しています。
日本の法律では、原酒の生産国表記が不要ですので、加水してボトリングした最終加工地が国内であれば国産ウイスキーになります。このように、インチキウイスキーが大量に売られています。
蒸留所の原酒10%に対して、海外の輸入原酒を90%足して、水で割ったようなウイスキーを自社のラインナップに加えています。グレンリベットもマッカランも、ボウモアもラフロイグも自社で作らない、ましては海外原酒を混ぜて自社ネームで売ることはありえません。アードナムルッカンやアードナホーのような新興蒸留所でも、ウイスキーとしてはリリースしません。3年未満の原酒を「試作品のスピリッツ」表記で売ることはあっても、他国のブレンドは存在しません。
こだわりのない原材料
では、有名蒸留所で生産が完結したウイスキーであれば「本物で美味しいのか?」と聞かれれば、「まあ、飲めなくはないでしょうね。」と答えてしまいます。
輸入大麦に依存
ここ1~2年で国産原材料にチャレンジするような蒸留所も出てきましたが、日本の大麦生産量は非常に少なく、ウイスキーに用いることのできる国産二条大麦は年間8万3千トン以下になります。
英国の場合は、麦芽用大麦をたった1社だけで毎年180万トンも発芽させています。
ウイスキーの販売量は、「◯瓶」だけでザ・グレンリベットの年間生産量を10倍以上超えるのに、大麦生産量は上記会社の20分の1にも満たない量しか作っていません。日本のウイスキー蒸留所は、そのほとんどを輸入大麦に頼っているのが実情です。
テロワールへの理解がない
例えるなら、「世界に認められた、アメリカSAKE」と謳って、99%日本の米(ブレンド米)を輸入して醸しているのに近いです。
スコットランドでは本国の大麦を使うだけでなく、蒸留所のある地域で採れた大麦を使うという「テロワール」の概念が広がりつつあります。ブルックラディが特に有名ですが、古代品種を復活させたり様々なチャレンジをしています。まして、他国から持ってきた原酒を瓶に詰めて「ウイスキー」を名乗ることなど絶対にありません。
もし仮に、地元で採れた大麦を使ったり、国産ワインの空き樽を使い、蒸留所の併設の貯蔵庫で10年以上熟成させるような本格的な蒸留所が出てくるならば本当の意味での国産ウイスキーが完成するかもしれません。
理解の無い生産者
最近のブームで「村おこしの一環」程度の感覚で、蒸留所を開設しているようなところも増えています。酷いと求人サイトに「ウイスキー製造経験があるかた募集!給与・月24万円」など思いつきとしか思えないようなところがあります。
オーナーが英国の蒸留所で働いていた時期がある、またはワインインポーターや洋酒輸入の長い経験とコネクションがあるならまだしも、不動産屋など異業種が「儲かりそう」だとか、焼酎製造者が「似てるしイケるんちゃう?」といった感覚で始めているところもあります。
良いウイスキー樽の入手は難しい
国際的にもウイスキー樽材が枯渇していて、良質なものはスコットランド国内でも入手が難しい時代です。
そんな中、「どんな味でも作れば売れる」国産ウイスキーバブルなので、樽の仲介業者から品質の低いものを仕入れて、貯蔵してそれっぽく見せかけている蒸留所があります。本国では、バーボンカスクやシェリーカスクを中心にして、ファーストフィル、セカンドフィルと詰め替えるたびにリチャーをします。蒸留所によってはサードフィル以上は使わないところもあり、他国に売却することもあるそうです。
シェリーを飲まない生産者
衝撃的だったのが、とあるウイスキー蒸留所の責任者と話していたとき「どんなシェリーが好きですか?」と聞いたところ、「シェリーは飲みませんね」と答え驚きを隠せませんでした。
企業秘密なのは分かりますが、樽材のこだわりが全く無い蒸留所が存在するということです。日本にありがちが、樽材の輸入仲介業者が手配したものを「とりあえず買ってみた」見様見真似で「やってみた」が多すぎます。
スペイン・ヘレスのボデガに行って、交渉する覚悟が無いどころか、アモンティリャードとオロロソ、ペドロヒメネスの違いも分からないレベルの人たちがウイスキーを作っています。(※そういったケースもある)
例え、ペドロヒメネスひとつとっても糖度やアルコール度数が違いますし、強制送風ではなく天日干ししている農家もあります。フロール、産膜酵母が味わいを構成する重要な要素で、ワイン内の酸素を餌にするため酸化を防いでくれる。この程度のことは素人の私でも知っています。
シェリーの運送用カスクは1986年のEU加入によって原産地名称保護制度が導入されてシェリーが国内でボトリングされなければならないようになりました。これによって運送用のシェリー樽が英国に入荷しなくなったので、1990年代にはマッカランが行っていたようなシーズニング樽が主流になり、スペインには「シェリーカスク」を製造する専用業者が存在するほどです。
知識とツテがないとまともな樽材が来ない
カスクはウイスキーの味を構成する上で重要ですが、日本の思いつき蒸留所が安価で手配できるものは、質の低いシーズニング樽です。シーズニングが悪い訳ではありませんが、スペインの製樽業者には「本物のシェリー」ではなくシェリー風味の合成液を中に入れて放置して、中の液体を捨てているようなところも存在します。それだけにとどまらず、以下に良い樽材でも組み上げなど管理は熟練の技術が必要で、湿度の温度管理によっては黒カビが発生してネガティブな香りが風味が出てしまいます。
バーボンカスクの場合はまたシェリーとは別ですが、北米産のホワイトオークもピンきりで、バーボンが入っていた上質な空き樽となると現地の関係者と知り合いでないと入手は難しいはずです。
思いつきレベルの蒸留所が多い
もちろん日本にも素晴らしい蒸留所はありますが、ウイスキーを作っているのに樽材のコネもないツテもない、樽の管理もどうすれば良いか分からないようなレベルの蒸留所も多いということです。
スコットランドでは10歳に満たないような子供が蒸留所で遊び回り、16歳ころから樽の組み立てを覚えて、単式蒸留器を操作したり、初留釜からのミドルカット(スピリッツセーフ)をできるまでになります。数万樽の中から、特性や特徴を体で覚えるといいます。
アメリカ人が思いつきで「美味しい日本酒」を作るのが難しいのと同じようにまた、日本人が英国ウイスキーを思いつきで「美味しいウイスキー」を作るのは難しいことだと思います。
現状の理解のないウイスキー生産者たちは、米を食べたことがない人が日本酒を作っているようなものです。
スコットランドとは土壌も水も気候も異なる日本で、美味しいウイスキーを作るというのは並大抵のことではありません。
流行りのクラウドファンディングでは「ウイスキー作ってみるので、樽で買ってください!」と一口50万円などで出資者を募っていることもありますが、その蒸留所が本当にウイスキーに理解があるのか、技術があるのか、この当たりを見極める必要がありそうです。
※上記内容に誤りなどあれば、コメントでご指摘願いします。随時、修正等を行います。