今回は意外に難しい、実践的な入札テクニックについて解説します。
相場が決まっていないものへの入札は、”心理的”な感覚や近似した銘柄の取引を参考にします。
大量出品されている物は相場が存在します。いつもnoteで公開していますが、平均取引価格が10,000円の物は、「9,000円なら手頃」「11,000円はやや割高」といった具合です。
ウイスキーの売買というのは非常に面白く、ほとんど流通していないボトルがポツっと出品されることがあります。その1件ならまだしも、6本所有しているものを1週間ごと出品する例もあります。
大量出品するときの売却側の心理
例えば貴重なウイスキーが6本持っていたとしたら、1円スタートで6本セットにするのは最もNGな方法です。想像以上に安値で終わってしまうことがあります。
高値で売却するには2つ手法があります。
1つは、高額で6本セットで長期間出品する方法です。
1週間では金額に合意する買い手が見つからなくても、1ヶ月から6ヶ月ずっと出品することで国内外で欲しい人に見つかる可能性が上がります。
もう一つは数ヶ月ごとに少しずつ売却する方法です。
株式投資でも小型株の場合は同じ手法を取りますが、いきなり大量に板に並べると「売り圧力」が優勢になり相場が下がってしまいます。
そのため、「貴重な1本ですよ!」といった雰囲気で6ヶ月以上かけて少しずつ売ります。この方法だと相場が崩れにくく、在庫本数や手の内が明かされにくいです。不動産も同じですが、売り急いでいるときほど”値ごろ感”を出さなければなりません。
強気な取引価格にするためには時間をかけてじっくりが基本となります。
買い手からすると、急いで大量出品しているケースは相場が下がりやすいので、仕込むには最適です。
1円スタートが繰り返される相場を攻略する
上記の売却方法はオークションの基本となりますが、難しいのが「希少ボトル」なのに1円スタートで、何回か繰り返されるパターンです。
実例を上げてみます。
例えばこちらは、ちゃがたパーク オークション店様の出品されている「アン オークニー 20年 2000 ホグスヘッド ザ シングルモルツ オブ スコットランド (エリクサーディスティラーズ) 56.9度 700ml」です。
価格は23,346円(税込 25,680 円)となっています。他のショップでも同等価格の販売になります。
先月末の4月28日終了で1円スタートがされています。このときは何本あるかは入札者には分からない状態です。
結果、25,680円から0.65掛けの16,500円で終了しています。偶然このボトルを探していた人からすると9千円引きの価格になります。
面白いのは2件目です。1回目の出品で落札できなかった人や、「割安」と判断した人によって強気相場になっています。25,680円が定価なら2万円でもまあ良いだろうと判断したのでしょうか。
3回目になると、初回に戻って16,600円になります。希少ボトルですが、相場の中でここが心理的なサポートライン(支持線)になっているようです。
3,4,5回と出品されて、あれ?結構在庫あるんじゃん、と雰囲気が出てきます。
買い圧が弱いので、2万円は越しません。なんと直近ではサポートラインを割って半額近い14,500円で終了しています。
このことから、初回の入札の相場観が重要視されていることが分かります。
投資用でない限り、通常1本あれば満足するようなボトルですので、上記の相場を見ると短期間で10人以上買い手を見つけないと下がってしまうのかもしれません。
「じゃあ、最後に買えばいいのか!」と思うかもしれませんが、この逆のパターンも存在します。
こちらのティーリング 21年は、マッカランと抱き合わせ販売されたため一時的に流通量が増加しました。通常販売価格は36,800円です。
やはり初期は販売価格から0.65掛けの23,920円で落札されています。
ここから面白いのが、42,000円で2本つまり1本21,000円で半額近い価格です。これは安すぎたのか、次は50,111円、52,000円と回数を重ねるほど上昇していきます。
なんと、その後は2本55,000円以上がサポートラインになり、最終的に2本56,420円で終了しています。
出品量が増加すると相場が下がるのが通常ですが、初期の落札価格が「こりゃ安い」と印象つけたためか、後半いきなり上がっています。
最初に42,00円で落札した人は、1週間後に届いた商品を再出品するだけで1万円の利ざやになってしまうほどです。1発目の落札はオークション参加者同士で相場を探っている状態ですので、安い価格で終わることもあります。
理性的な入札、感情的な入札
では、上記をウイスキー投資で考えてみます。
生産数量が限られていて希少なヴィンテージ、今後値段が上がると判断したとします。販売価格は36,800円なのでリセールを考えて、0.7掛けの25,760円を目安とします。
理性的・機械的に入札するのであれば、26,000円で全ての出品ボトルを入札して放置します。メリットは感情的にならずに、希望金額以下”であれば”全て入手できることです。デメリットは、予約入札でないと入札する価値があるとバレてしまうことです。
オークションというのは面白く、誰かが入札していると商品に興味を持ってしまいやすいので、価格が上がります。
感情的な入札では、終了時間ギリギリになり予算の低い価格からじわじわ勝負する方法です。まずは11,000円、相手がいれてきたら今度は12,500円など、陰湿な相手だと20分30分とダラダラ応札して自動延長されることもあります。
感情的な入札のデメリットは本来の予算を超えて「勝つ気持ちよさ=競り落とす」ことに目的が変わってしまうときがあることです。もうちょっと予算増やそうかな?が繰り返される事が往々にしてあります。
メリットとしては、ギリギリでジワジワ勝負することで相手が諦めると相場より安く終わることがあります。
この2つの入札方法を、出品物やここのスタイルに合わせて活用するのが良いと思います。参考にしてみてください。
免責事項
当サイトの内容は個人的な推測に基づくもので、内容の完全性や、その正確性を保証するものではありません。ウイスキー投資は法律上の制約や損失が発生する場合があります。必ず自己責任おいて入手・売却等をお願いします。利益が出た場合は、確定申告など税務上の申告が必要になる場合もあります、税理士や税務署職員に相談ください。大量の酒類を個人売買する際には、酒税法上の免許や認可が必要になります。