昨年5月に63,000円で落札されていた「スプリングバンク21年」ですが、現在では142,000円で落札されています。もしも、去年2本購入していたら、それだけで15万円もの利益が出てしまいます。
ウイスキーブームの面白いところは、人気になることで「味が気になる」という興味から値上がりすることがあります。仮想通貨であれば、「イーサリアムが人気らしい」といったように、資産価値が上がるから買うという投機的な価値判断で買われます。
ウイスキーも同じように、上がるから買うという人もいますが「そんなに人気なら飲んでみたい」という理由で買う人も多いのです。
本当に値段に見合った美味しさなのか?
味覚は人それぞれで、一概に何が正しいというものはありません。とはいえ、強引に個人的な味の解釈をしたいと思います。
昨月、ひょんなことからスプリングバンク旧10年と新10年、15年、17年マディラカスクを飲む機会がありました。そこで、価格と味について書いてみます。
スプリングバンク10年(旧ラベル)
スプリングバンクは蒸留所で、製麦からボトリングまで一貫して行うことで有名です。発芽をさせるフロアモルティングを行っている数少ない蒸留所でもあります。
モルトの香水と異名があるようですが、旧ラベルの10年は加水されているためか、そこまで強い華やかを感じることはありませんでした。
没個性的というか、ぱっと感じ取れる香りが少なく、洋梨のジャムのような甘い香りが浮かびました。飲んでみると大麦由来のどっしりとした甘みがあり、非常にモルティーで油分を感じる飲みごたえです。
確かに美味しいのですが、実売1万円以下のグレンモーレンジ10年(旧ラベル)の方が個人的には美味しいと思います。
水で割ったり氷を入れると、アルコールの骨格がなくなるのでストレートがお勧めです。
これに4万円は無いですね。8,000円程度が妥当なのではないでしょうか。
スプリングバンク10年(新ラベル)
香りが以前より華やかになり、口当たりが軽くなりました。確かに少し塩っぽさを感じますが、他の有名蒸留所と横並びな気がします。
最近めちゃめちゃ質が下がりましたが、グレンリベット12年やグレンフィディック12年なんかとポジションはそこまで変わらないような気がします。キャンベルタウンは余り飲んだことがないのですが、特出する価値は見当たりません。
納得できる実売価格は5,000円~6,000円が程度が妥当なのではないでしょうか。
スプリングバンク15年(新ラベル)
正直、最もがっかりだったのが15年です。「え!? 10年とほとんど味変わらないじゃん……」と自分の味覚を疑ってしまいました。
まとまりがなく、目指す方向性が分かりません。アルコールに溶け込んだ香りが、確かに気持ち鮮やかな気もしますが、突然これ単体でブラインドで出されたら10年と勘違いしてしまいそうです。
正直、これをご馳走していただくなら、少し前の時代の「バランタイン17年」を飲ませて欲しいです。
納得できる実売価格は8,000円~9,000円?
スプリングバンク17年 マディラカスク(新ラベル)
これは大変美味しいです!たった2.8%しかアルコール度数が高くないのですが、カスクストレングスのような濃厚な蜜の感じで、それでいて荒々しさやトゲを感じさせません。
地域は違うのですが、マッカランのカスクストレングス(旧ボトル)に似たエステリーさがあります。このボトルなら「モルトの香水」と表現される所以があります。飲んだ後に立ち上がる香りは、スペイサイドと違う、わずかに潮味を含んだ特有なものです。
予算の関係上、これ以上高いスプリングバンクは飲めなかったのですが、もしバーで飲んだり、実際に飲む目的で購入するならば17年以上のボトルを狙うのをお勧めします。
10年・15年ではスプリングバンクの真価が発揮できていないように思えます。21年以上や、このマディラカスクのように限定カスク、他にもボトラーズ扱いのシングルカスクなんかは大変美味しいのではないでしょうか。
これなら3~4万円程度でも納得できます。調べてみたら、完売していますがサトー酒店さまで当時12,650円で販売されていたようです。これが1万円弱だったら何本も飲みたいですね。
「スプリングバンク17年 マデラカスク」を調べてみたところ、なんと10万円を超えて落札されているようです。
スプリングバンク15年は定価9,082円(税込9,990円)が3万円程度にしかなっていませんが、17年は12,650円が10万円に……。
もしかして、ウイスキー愛好家の方も私と同じような意見で、17年の方が美味しいと判断しているのかもしれませんね。単純に定価ベースでスライドして、上昇していないのがウイスキー投資の面白さですね。長期投資では、「これは美味しい!」と納得するのが大切かもしれません。
※追記
マディラカスク 本数限定だったそうです。すみません。
世界: 9200本
日本: 600本
値段相応の価値?
上記写真は2008年頃に行った、横浜のバーの写真ですが、当たり前のようにどこでもスプリングバンク(旧ボトル)が飲めました。上記の国産ウイスキーもショット700円均一です。
当時、左のグレンモーレンジ(旧ボトル)や右のタリスカー10年(旧ボトル)と同じ価格帯でしたが、味わいの感動も、それらと同等程度だと思っています。つまり、今回試飲してみて思ったのが「定価ベース」ではないかということです。
1万円のボトルが5万円になっても、それは流通量が減って取引金額が上がっただけで、味が5万円になった訳ではありません。中には17年マディラカスクのように、実際の価格より何倍も美味しいものも紛れていますが、基本的には定価ベースの味わいだと思いました。
国産うなぎが、もしも中国人に爆買されてしまえば、稚魚も少ないのできっと鰻重が3,000円から5,000円、下手すれば1万円になってしまうと思います。しかし、うなぎの味は今の3,000円とかわりありません。
これに対して自身がいくらまで出すか?というのが大切です。「高いけど鰻なので1万円出す」のか、「鰻重は3,000円が限界」とするのか、それは味と予算とで導き出し、決めるべきです。
話がそれてしまいましたが、もしスプリングバンクを割高で購入するのであれば、「手頃だから」と10年、15年を選ぶのではなく本当に美味しい1本を入手したほうが良いと思います。
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