業務妨害になってしまう可能性があるので「A蒸留所」として国内のとある新興蒸留所について書いてみます。本記事は、フィクションですので、真に受けずにエンターテイメントとしてお読み下さい。
見通しの難しい国産ウイスキー
あるA蒸留所は、近年の国産ウイスキーが過熱する中、地方都市の水のキレイな場所で設立されました。開始当初、3種類のプライベートカスクを提供して、「カスクーオーナーになれる」と出資を募りました。
3種類の樽は容量によって価格が異なります。
バレル(内容量 180リッター)100万円
クォーター(内容量 110リッター)60万円
オクタヴ(内容量 55リッター)30万円
上記の費用で、最低でも3年間貯蔵してもらうことができます。
ボトリング代金はまた別で必要になります。
当初のフルサイズ(700ml)にカスクストレングス原酒でボトリングした場合は以下の本数をエンジェルズシェアで想定していました。
バレル 200本 (@¥5,000)
クォーター 120本(@¥5,000)
オクタヴ 50本(@¥6,000)
ボトリング代は上記にプラスされますが、概ね5~6千円を想定されていました。また希望があればバレルは10年、クォーターは7年、オクタヴは5年の最長貯蔵年数まで延長できる価格になっています。
英国と日本では気候が異なる
では、3年後に実際にボトリングすると、どのようになったのか……。
オクタヴは約50本をボトリングできる計算でしたが、気候の変化よってボトリングできた本数はわずか30本でした。
最大の5年まで貯蔵した場合は25本以下になってしまう事が考えられたため、途中の時点でボトリングを決意したそうです。
つまり当初は6,000円+αでボトリング予定をしていましたが、実際には1本あたり12,000円と瓶詰め輸送コストで14,000円相当の高級ウイスキーができてしまいました。
味わいは、若々しく3年熟成ですので色味も薄くやや、アルコールのきつい仕上がりになりました。
ボトリング時の税金及び諸費用
酒税 1リッター当り アルコール度数に10円を乗じた額
カスク払出費用 20,000円 ボトリング費用 1本当り500円
オリジナルラベル制作費用 1本当り500円 などなど
酒販免許の関係で転売ができないので、仲間内や世話になっているバーに持っていって消費したそうです。A蒸留所は転売に非常に厳しく、監視をしているといいます。
応援する「気持ち代」が大きい
3~4年のウイスキーで美味しいものを作るのは極めて難しいことです。数百年の歴史があるスコットランドのウイスキーでさえ、3~4年は試験的なリリースだけで通常は8年、一般的には12年以上がボトリングされています。
ノウハウが浅い新興蒸留所であれば、やはり3年熟成で「感動する味わいのウイスキー」を作るのは難易度の高いことです。もちろん絶対にできないということはありません。
ボトリングされたものが他のウイスキーと比較したとき、流通していない「希少価値」としては評価されるかもしれませんが、味わいとしては難しいのが実情です。
そのため、国内の新興蒸留所のカスクーオーナーになるのは、純粋に「応援」する気持ちで出資するのが良いと思います。
結局このA蒸留所は、保管庫の関係からオクタブ以外のバレルやクオーターは廃止して、小さいサイズの樽だけ、それも熟成期間を3年で必ずボトリングするようにルールを変更しました。途中で厳しい実情を目の当たりにしたようです。
カスクーオーナーになるべきか?
飲食店オーナーや、バーのオーナーであれば店先で提供して話題にできるので率先してカスクーオーナーになるのをお勧めします。
ですが、もしウイスキー投資先として資金回収を考えているのであれば、カスクーオーナーになるのは慎重になった方が良いと思います。
過去にサントリーが行っていた、オーナーズカスクは何万樽もある貯蔵樽の中から最も品質の良いカスクを選別して顧客に安価に提供していました。
今では考えられませんが、熟成期間が10年を過ぎて200本ボトリングできる樽を150~200万円程度で販売していました。このため市場には1本1万円弱で流通していたのです。
新樽を初年度からボトリングすると上記のようなリスクだけでなく、思ったものと違う味わいに仕上がることもあります。製法や条件によってはゴムパッキンのようなニオイが出てくることもあります。
1990年代にアランモルトのカスクーオーナーになった人は、8年後にサンプルを取り寄せて、あまりのニオイのきつさに衝撃を受けたそうです。その方は樽を更に寝かせて保管しているそうです。
ただ、このケースは味わいはともかく投資の価値としては成功しています。
A蒸留所以外にも、国内には様々な新興蒸留所があり、カスクーオーナーを募集しています。
九州にあるB蒸留所は、元々焼酎メーカーで英国での蒸留所研修や勉強をするまでもなくウイスキー蒸留所の設立に踏み切りました。
確かに、焼酎とウイスキーは製法が似ていますが、スコットランド人が美味しい焼酎を作るのが難しいようにまた、日本人が安易に参入して美味しいウイスキーを作れるとは限りません。
これらのことから、カスクーオーナーになるのは慎重になった方が良いと思います。
免責事項
当サイトの内容は個人的な推測に基づくもので、内容の完全性や、その正確性を保証するものではありません。ウイスキー投資は法律上の制約や損失が発生する場合があります。必ず自己責任おいて入手・売却等をお願いします。利益が出た場合は、確定申告など税務上の申告が必要になる場合もあります、税理士や税務署職員に相談ください。大量の酒類を個人売買する際には、酒税法上の免許や認可が必要になります。